帽子のお仕事


正直な布帛の帽子を作る為に


大げさな見出しを付けましたが、要はお金を払って購入して頂いたお客様に残念な思いをさせない様にしましょう!って事です。

お客様が、買って良かったと喜んで頂ける事を常に意識しています。

私は祖父の代から帽子を作っている姿を見て来て、これが帽子の作り方なんだな〜と長いことそのまま受け止めてきましたが、自分でミシンを覚え、パターンを一杯引いている内に疑問に思うことが色々と出て来ました。

帽子の縫製その物は結果として殆ど独学になりました、手を抜いて会社の利益のみを求めた物作りは、時代と共に海外にシフトしました。日本製として作っているのに、安い物を作っている海外の工場の作り方を真似たメーカーもかなり有りましたし、いまでも残っています。

それは違うんじゃないかと思い、国内で作るのなら「日本製」として恥ずかしくない物を作りたいと常々思っていましたが、昔は生産を外部の工場に委ねるしかなく、当時のお客様には申し訳無いことですが、量産で上がってくる帽子のレベルを予想してわざと手を抜いてサンプルを作っていた時も有りました。忸怩たる思いでした。

その後、色んなショックがあり、生産を根本的に見直す事が出来るチャンスが来ました、外部の生産をやめて社内で生産が出来る様にスタッフを雇い体制を作って来ました。

ようやく私が見ても恥ずかしくない帽子が社内で出来る様になり、私がサンプルを本気で作りスタッフがそれ以上の量産品を作ってくれる、そんな良い感じに成って来た所で、ようやく、昔から気に成っていた作業をやめることにしました。

帽子の型入れ(プレス)について

私の知っている限り、殆どの帽子メーカーが型入れ(下の画像の道具を使います、他にもハット、麦藁帽子専用の大きな物も有ります)をしています。縫い上がった帽子のシワや歪みを取って見た目を綺麗にする作業です。

パターンを引いている立場からすると折角微妙な線を引いたのに、結局金型に合わせられてしまう事に納得がいかない日々が長く続きました。

何が違うのかと言うと、一番大きな事は、一般的に過度な型入れをした帽子は「洗うと元に戻ります」

型入れで綺麗にした部分が露呈しています。

メルカリで見ていてもバイアステープが波を打ったり縮んでしまったキャップやハット、サイドの縫い代が直線(正面から見て階段状)になってしまっているフォーパネルキャップ、明らかに部分的に歪んだ帽子などが出品されています、もちろん弊社で作った帽子も相当数出品されていますが、概ね綺麗だと思います。

※ヤフオクが始まった当時も出品数や相場を見ながらブランド力を確認していました、かなり昔から「中古相場」はそのまま人気度を表す数字なので、取引の有るブランドは必ずチェックしています。

※最近は転売屋さんが多く成り無理に高値に吊り上げているのも良く見かけますが、逆に見れば相場が崩れはじめたら一番先に逃げるのが転売屋さんですので、値引き額などもチェックしています。

もちろんメーカーとしての事情は有るかと思いますが、たぶん、そういうメーカーは現状に疑問を持っていないのだろうと思われます、帽子屋として型入れをして納品するのが当たり前だからです。

技術レベルの向上には疑問を持つ事が大切な要素です、このままで良いんだろうか、もっと他に方法は無いのだろうか、もっと綺麗な帽子を作るには何が必要なのだろうか、このままで買ってくれたお客様が喜んでくれるのだろうか????などなど。

そう言う事を一工程毎にクリアして行くことが、私は大切だと思っています。

そうして、色んな気に成る事をクリアしてきて、型入れをしなくても納品出来る帽子まで届きました。

縫いっぱなしの帽子は洗っても歪んだりしません(生地の特性上縮率は出ますが、明らかな時は先にパターンで修正しています、メルカリで販売している綿和紙のキャップなどがそうです)、高いお金を払ったのに、洗ったら歪んでしまって恥ずかしくて被れないって事は弊社の帽子では無いです。

過度な型入れをした帽子の特徴(分かりやすい点)や工場のスタンスなど。

  • 庇の両端の付け根の裏側のスベリがやけにテカっている、若しくはタック状に成っている。
  • 裏のバイアステープの縫い代が妙な形で固定されている。
  • 穴かがりがやけに出っ張って見える。
  • ボッチの足に押されて天上がすこし尖って見える。
  • HPで一生懸命型入れをしているとアピールしている(超有名な帽子屋さんも有りますね、型入れしないと売れないと自分で言っている様なもんです。)

大きな話をしましたが、現在持病の為、会社の規模を縮小し細々と帽子を作っていますので、規模の大きなお客様の対応はキャパ的に難しいと思われますので、ご了承下さい。

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